最低賃金に合わせて賃上げするだけでは、助成金を受け取れない?(第2回)

前回は、京都府の最低賃金の引き上げ(1,122円 → 1,180円、2026年11月16日発効)と、キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」をご紹介しました。

今回は、このテーマで私がいちばんお伝えしたかったことです。

同じ「1,122円から1,180円への引き上げ」でも、時給を上げる日によって、助成金の対象になるかどうかが変わることがあります。

2つの会社の例

どちらも、時給1,122円のパートさんを、1,180円に引き上げた会社です。

A社:最低賃金が変わる前の11月1日から、時給を1,180円にした。
B社:最低賃金が変わる11月16日から、時給を1,180円にした。

上げた金額は同じです。それでも、B社のこの引き上げは、助成金の対象になりません。

なぜ、B社は対象にならないのか

最低賃金を下回る賃金で働いてもらうことは、法律で禁止されています。11月16日以降は、時給を1,180円以上にすることが、すべての事業主の義務になります。

そのため、厚生労働省の支給要領では、最低賃金が発効した日以後に賃金を引き上げた場合、その最低賃金に届くまでの引き上げ分は「3%以上の増額」に数えないと定められています。

B社の引き上げ(1,122円 → 1,180円)は、全額が「最低賃金に届くまでの分」です。助成金の計算では、引き上げはゼロとみなされてしまいます。

一方、厚生労働省のQ&Aでは、最低賃金の改定が決まってから、発効日の前日までに賃金規程などを改定していれば、新しい最低賃金に合わせた引き上げ分も含めてよいとされています。京都府の新しい最低賃金は9月18日に公示されているため、今年であれば、11月15日までに時給の引き上げを始めることが分かれ目になります。

「11月15日までに上げれば必ずもらえる」わけではありません

ここで、誤解のないようにお伝えしたいことがあります。

11月15日までに時給を上げることは、あくまで最低賃金に合わせた引き上げ分を数えてもらうための条件です。助成金を受け取るには、ほかにもいくつもの要件を満たす必要があります。たとえば、

  • 引き上げる日の前日までに、「キャリアアップ計画書」を労働局に提出していること
  • 時給の額が、就業規則や賃金規程などのルールに定められていること
  • 改定後の賃金を6か月分、実際に支払っていること
  • 対象のパートさんが雇用保険に加入していて、引き上げの前後で一定期間続けて働いていること

などです。どれか一つでも欠けると、受け取れません。

また、「引き上げた日」とは、規程の文章を書き換えた日ではなく、新しい時給を実際に適用し始めた日のことです。10月中に改定を決めていても、新しい時給を11月16日から適用すれば、B社と同じ扱いになります。

11月16日以降に上げる場合は?

発効日を過ぎてしまっても、まったく道がなくなるわけではありません。最低賃金を超える部分で3%以上の引き上げができれば、対象となり得ます。ただ、最低賃金に届くまでの分は数えてもらえないので、そのぶん大きな賃上げが必要になります。

逆に言えば、どうせ1,180円に上げる必要があるなら、同じ金額を、助成金の対象になる時期に上げるほうが、ずっと有利です。

期限から逆算すると

11月15日までに時給を上げるには、その前日までに計画書を出しておく必要があります。賃金規程の確認や、引き上げ後の時給の設計(端数の処理ひとつで3%に届かなくなることもあります)を考えると、準備に使える時間はもうあまり残っていません。

「うちの場合はいつまでに何をすればいいか」を一度確認しておきたい方は、お早めにご相談ください。


前回:最低賃金の引き上げ、助成金を活用できるかもしれません
次回:キャリアアップ助成金、いくら受け取れる? 申請前に確認したいポイント

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