第1回・第2回では、最低賃金の引き上げに合わせて、キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」を活用できること、そして時給を上げる時期が大切なことをお伝えしました。
最終回の今回は、実際に検討されている事業主の方に向けて、支給額や要件、申請までの流れをもう少し詳しくご紹介します。
引き上げ率と支給額
支給額は、引き上げ率に応じて、対象となる方1人あたりの定額で決まります。
| 引き上げ率 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 3%以上4%未満 | 4万円 | 2.6万円 |
| 4%以上5%未満 | 5万円 | 3.3万円 |
| 5%以上6%未満 | 6.5万円 | 4.3万円 |
| 6%以上 | 7万円 | 4.6万円 |
1年度・1事業所あたり、100人までが上限です。
たとえば、時給1,122円のパートさん10人全員を1,180円に引き上げた場合、引き上げ率は約5.2%なので、
6.5万円 × 10人 = 65万円です。
このほか、条件を満たすと1事業所1回限りで上乗せされる加算もあります(中小企業の場合)。
- 職務評価加算(20万円):仕事の内容や責任の重さを評価する「職務評価」を行い、その結果をもとに賃金を引き上げた場合
- 昇給制度加算(20万円):パートさんなど全員に適用される昇給の仕組みを新しく定めた場合
どちらも制度づくりに時間がかかるため、今年の11月の賃上げに間に合わせるのは難しいかもしれません。来年以降の検討をおすすめしています。
端数の処理に注意
引き上げ率は「3%以上」かどうかで区分が分かれます。たとえば時給1,150円を3%上げると、1,150 × 1.03 = 1,184.5円。
これを切り捨てて1,184円にすると、引き上げ率は約2.96%となり、3%に届きません。
端数は切り上げ、上げた額を元の時給で割って、区分の境目を超えているか必ず確かめてください。
(この例なら1,185円で、35 ÷ 1,150 = 約3.04%)
申請前に確認したいポイント
細かな要件はいくつもありますが、まずは次の4点を押さえておいてください。
- 対象になる方:パートさん・契約社員など非正規雇用の方で、雇用保険に加入している方。正社員や、事業主・役員の3親等以
内のご親族は対象外です。 - 賃金規程・就業規則:時給を定めたルールの、原則すべての等級を3%以上引き上げ、そのとおりに支払うことが必要です。
- キャリアアップ計画書:時給を引き上げる日の前日までに、労働局へ提出しておきます。
- 申請までの流れ:引き上げ後の賃金を6か月分支払い、その翌日から2か月以内に申請します。入金は早くても来年の後半にな
ります。
要件の詳細は、厚生労働省のページでご確認いただけます。
→ キャリアアップ助成金(厚生労働省)
おわりに
最低賃金の引き上げは、事業主の皆さまにとって負担です。それでも、準備しだいで、その一部を助成金という形で取り戻すことができます。
「うちのパートさんの時給だと、いくらになる?」「計画書はもう間に合う?」といった具体的なご質問にもお答えしています。お手元の時給一覧と、給与の締め日・支払日が分かるものをお持ちいただければ、何をいつまでにすればよいかを一緒に整理いたします。
ご自身で申請される場合も、手続きのアドバイスはさせていただきますので、どうぞお気軽にお声がけください。
第1回:最低賃金の引き上げ、助成金を活用できるかもしれません
第2回:最低賃金に合わせて賃上げするだけでは、助成金を受け取れない?